黒いバッグを持つ女11
・ ・ ・ ロク、散歩だぞ。 ・ ・ 何だ? ロク、どうした。 不安を感じながら、屈んで小屋の中を覗いた。 もしや、と思ったお産はしていなかった。 ロクは、スフィンクスの様な座りで、顔だけは床に付けて上目使いでこっちを見ている。 「 おい、どうした 」 「 散歩どうする? 」 動かない。 臨月の妊婦さんだ、普通の体調、精神状態では無いのだろう。 ただ、トイレをして置かないと体に悪いだろうと、 半ば強引に引っ張り出そうと、手を入れたと同時にゆっくり出て来た。 アクビをしながら背伸びして、身震いをした。 「 仕方ねぇな、付きあってやるか 」 ロクが、私の散歩に付き合う様な態度だ。 おそらく、体が重く動きたくないのだろう。 普段の動きと明らかに違う。 のそのそ歩いて、散歩の距離も100m位で用を済ませてすぐ帰ろうとする。 私は、楽だ。 家に戻り、決まり通りの水・餌を準備したが、水だけ飲んで小屋に入った。 ・ ・ ・ ホントに妊娠なのか? 予定日の2ヶ月は過ぎている。 病気でお腹に水とか溜まってるんじゃ無いだろうな。 不安と心配が交差する。 お産の事だけでも、精神的疲労を感じているのに。 考え過ぎであれば良いが ・・・・・ とんだ、年末になってしまった。 .