抱瓶 from 29-40-2012

抱瓶（だちびん）というのは、酒器の一つだそうです。横から見ると台形なのですが、上から見ますと三日月のような形になっています。体に沿うようになっていて、抱いて運べるような形だから抱瓶。あるいは抱瓶に抱きつかれているような格好だからそう呼ぶのかもしれませんね。 抱いて持ち運ぶのは大変ですので、ちゃんと紐を通す穴もついていて、肩から提げられるようになっているようです。 体に沿った形になっているのは持ち運ぶときに邪魔になりにくいから。そして、運んでいる間に人肌に燗がつくという効果もあったなんて、何かで読んだ記憶があるのですが。 文章を読んでいると「なるほど」と思うだけでしょうけれど、実際に自分が抱瓶を持ち運ぶこと考えると、これはどうにもやっかいなことなのです。 何がやっかいか。焼き物であることです。体に沿って抱きつかせていても、どこかにコツンとぶつけたら割れてしまいます。それに、重たい。抱瓶などという不便なものに酒を入れて歩くくらいなら、竹筒か何かにした方がよほど便利です。 それでも、今なお抱瓶は作られています。壷屋へ行きますと、お店には大小さまざまな大きさ、さまざまな絵柄の抱瓶が並んでいます。それを見て、 「沖縄には、今も抱いて歩く人が大勢いるんだなあ」 なんて思いませんよね。私は未だかつてそういう人を見たことがありません。そう、今の抱瓶は実用品ではなくて飾りものなんです。そのまま飾ったり花瓶の替わりになったりしているようですね。 じゃあ、昔は実用的だったのかというと、そうでもなかったようで。お金持ちがみせびらかすために職人に作らせていた。なんてどこかに書かれていたのを見た記憶があります。ま、「昔」がどれくらいの昔なのか。発明された時から飾り物だったとは考えにくいですし。詳しいことはわかりません。


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